ソロ活動/ぽり/Clair Obscur: Expedition 33 のバックアップ(No.27)


評価点一覧:

  • ○フランス文化を土台としたアートワーク・音楽を使った演出の独自性
  • ○タイムライン式ターンベース戦闘+高難易度アクションコマンド+ビルド構築の特盛戦闘システム
  • △パリィ・回避が難しすぎる
  • △ビルドのバランスに難あり
  • △UIが見づらい
  • △描写不足のストーリー
  • ×ダンジョン内マップ・ミニマップがない
  • ×ワールドマップのファストトラベルがない
 

フランスのベル・エポック(1900年前後、パリ万博の全盛期)がモチーフの世界を舞台にした終末系ファンタジーJRPG。
開発元は元UBIのスタッフが設立したインディー開発スタジオで、開発者インタビューで言及されているとおり、UIやレベルデザイン(ゲーム進行デザイン)には日本製の有名JRPGオマージュ要素が随所に感じられる。
フランス産JRPG(本ページでのJRPGの定義はターンベース戦闘システムと一本道進行のレベルデザインを採用したRPG)というだけでも相当な変わり種ではあるが、本作最大の特徴はフランスならではのアートワークや音楽を使った演出。

 

本作のゲーム体験としての面白い部分はほぼ戦闘システム部分(攻撃・回避・パリィ時のアクションや特殊ギミックなど)に集中しており、特にパリィが成功したときの気持ちよさは随一。
ただし、その分パリィ・回避ができないと本作の戦闘はほとんど楽しめないので、反射神経ゲーが苦手な人には全くおすすめしない。
逆にソウルシリーズなどの反射神経を使うタイプのアクションが好きな人には非常におすすめ。
難易度設定のバランスは悪い意味で昔懐かし洋ゲー仕様で、最低難易度(難易度:ストーリー)が一般的な和ゲーのノーマル難易度くらいの難しさ。
オートパリィやオート回避のような救済措置を入れた低難易度がもう1・2段階程度は欲しかった。

 

仲間キャラはそれぞれ専用の戦闘システムとスキルツリーを持っており、各キャラの特性に合ったビルドを考えるのも本作の面白い部分。
しかしながらビルド間のバランス調整はかなり雑で、キャラ格差(正確にはキャラ専用武器の性能格差)が凄まじいことになっているため、パーティ編成と装備の自由度は事実上存在しないも同然になってしまっているところは減点ポイント。
修正パッチでいくつかの強ビルドがナーフ調整されているものの焼け石に水という印象。
先述の通りアクション部分を楽しむゲームとは言えども、シナジーやビルドを何も考えないような構成で楽しめるほど甘い難易度ではないので、ビルドを考えるのが面倒という人は攻略サイトで調べるほうが快適。

 

インディー開発ゲームとしてはかなり高い完成度となっている本作だが、上記のビルドのバランス以外にも

  • メニューUIが見づらい
  • ダンジョン内のマップ・ミニマップが実装されていない
  • ワールドマップのファストトラベルが実装されていない
  • シナリオの説明不足

といった複数の問題点があるのは、仕方がないながらも残念なところ。
中でもマップが無いことによるストレスがかなり激しいゲームなので、迷ったら素直に攻略サイトでマップを見よう。
最近は洋ゲーだけでなく和ゲーでもありがちだが、SDRだと暗いシーンではほとんど何も見えなくなるのでHDR環境が必須なことにも注意。

 

シナリオに関しては奥深いとか謎が多いとかではなく単純に説明不足。
演出のインパクトに圧倒されつつも、言ってることがよく分からないので常に疑問符が頭に浮かんでしまい演出に没頭しきれない、という体験になってしまったのは非常に勿体ない部分だった。
3Dゲームのイベントシーンはスクリプトエディタで簡単に追加できるようなものではないので、これもインディー開発のゲームとしては仕方がないところなのだが、せめてアーカイブのような収集要素にはもう少し分かりやすい伏線や解説を入れてほしかった。

 

総評としては、開発者が自分の好きなシステムを全部足し算したら面白いでしょ理論を採用したタイプのフランス産JRPGで、他ゲーで例えると非常に難しいマリオRPG。
小規模インディー開発ゲームとは思えないほど完成度が高く、特にアートワークや音楽など演出面の独自性は他に類を見ないので、ゲームに物珍しさ・新鮮さを求める人には特におすすめの作品。
開発者インタビューでは本作がFFシリーズなどのJRPGからのインスパイアによって開発されたゲームであると公言しているのだが、本作のターゲット層は高難易度アクションやビルド構築型RPGのプレイヤー層であり、FFを始めとした本家JRPGのプレイヤー層ではなくなってしまっているのが残念。
反射神経ゲーが苦手な人に対する救済措置をもっと積極的に入れてほしかった、というのが全体的な感想。

Playthrough